stage life

舞台観たり、若手俳優追ったりして、楽しんでます。

空想組曲「小さなお茶会。」

f:id:mntik:20151213223303j:image

空想組曲vol.12「小さなお茶会。」

2015/12/5〜12/13

@SBGKシブゲキ‼︎

 
 
久々のほさか作品でした。
とはいえ、これまで観劇したほさかさんの作品は、空想組曲として「女王の盲景」「無意味な花園」「眠れない羊」、その他「不毛会議」「うさぎレストラン」「ボーンヘッドボーンヘッダー」「遠ざかるネバーランド」とここ2、3年だけなのに改めて挙げてみるとそこそこな数になるので、それだけほさかさんがたくさんのモノを作ってるということですね。
 
ちなみに今回の「小さなお茶会。」は再演。空想組曲vol.3として2007年に上演し、演劇賞/優秀脚本賞も受賞された作品だそうです。
 
【あらすじ】
駅から少し離れた場所にある小さな喫茶店。
その店のアルバイト店員に恋をした大学生の少年。
彼は今日もコーヒーを飲みに来る……
ありがちな場所で繰り広げられるありきたりな恋愛模様。
それはほどほどのドタバタと「まぁ、よくあるよね」的なサプライズ展開を経て、ベタでご都合主義のハッピーエンドを迎える。
はずだった。
コーヒーカップがひっくり返るまではーー。
この冬、空想組曲がお送りするホットココアのようなハートフル・ラブコメディ(ただし致死量エスプレッソを含む)
 <公式HPより>
〜〜〜 
 
天真爛漫なカフェ店員の園美(原田樹里)に片思いをする気弱な大学生亀山敦史(桑野晃輔)。亀山の恋に首をつっこむ真面目なカフェのマスター(有馬自由)に、今時などこか軽い店員のあきら(町田慎吾)、亀山の大学の先輩である青山(こいけけいこ)。カフェに長居する挙動不審な客(小玉久仁子)に、あきらの彼女(八坂沙織)と、トイレを借りにやってきた青年(今井隆文)。
そしてジャスミンと名乗る謎の婦人(家納ジュンコ)に「誘拐」と連れまわされる高校生の敬太(勧修寺保都)。
 
亀山の恋が動きだしたのをきっかけに、それぞれの持っているストーリーが見え始める。
 
〜〜〜
 
前半はゆったりとした定番展開のラブコメ、そして中盤からは回想を通しながらそれぞれのキャラクターの視点で物語が展開していくので、まるでオムニバス小説のよう。そして最後にはすべてのピースが組み合わさり、一つのお話になる作品でした。 なんだか桐島、部活やめるってよ」を見た時の感覚に似てました。
 
 
“見えているものだけがすべてじゃない"
 前半にでてきた何気ない台詞や行動、幸せな展開が、別の角度になってみると全く別の見え方になって、色がガラリと変わる。見えてなかったのもが見えたときの衝撃、そのことを知ってしまったときの残酷さ。「世界がひっくり返る。」自分の見えているものなんてほんの一部で、実はいろんなものが隠されていることに気づかされる展開は面白くもあり、同時にドキリと怖くも感じました。それでも登場人物はみんな戸惑い怯えながらも目をそらさないで受け止める健気さを持っているので、それがほろ苦くて愛おしかったです。
 
ジャスミンが「どーでもいいものや些細な会話まで。確かに同じなんだけど全然印象が違う」って言っていたように二回目に観劇したときに、前半のほのぼのパートの見え方が変わって、気付けなかった部分がたくさん見えてきて。例えば、亀山のデート練習のときに園美に似てないといわれて「いっしょだよ」っていうあきらの台詞とか、亀山が園美を好きなことが確定して「関係あるのよ」っていって賭けに負けた青山先輩とか、ほかにも初見ではさらりと流していた色々な台詞や仕草に意味を感じるようになり、同時にこんな本が書けるほさかさんどんだけ頭良いの!?って思わずにはいられないです
 
「好きなら、なにしたっていいんだから」
純粋で無垢な言葉だけど、裏を返すとすごく危険な言葉だなぁと。
あきらは自分と園美はおかしい人間同士だから「少年には絶対分からない」と亀山のこと普通の人間扱いしてるんだけど、ここで亀山も爆発してしまっていて。だってあの臆病で推しに弱い亀山がなんの躊躇もなく熱湯をかけるんですよ?恋の力はすごいなぁ、と思う反面、それってもう立派に狂わされてるんじゃないかなぁと。
「僕じゃダメ?僕じゃ園美さんに似合わない?」
「私おかしいから」
園美も亀山を普通の人間として見ているけど、わたしにはこの時の亀山も明らかに「異常」見えました。あんなことがあったのに何事もなかったかのように、この後のデートの話したり、園美を受け入れようとしたり。無理やりだとしても気丈に振る舞う姿は「おかしいひと」だと思う。確かに物語のなかで「普通の少年」の立ち位置でいた亀山だけど、園美が関わったこのときは明らかに普段とは違う部分が出てきているように見えました。そもそも普通ってなんなんだろう。結局普通な人間なんていないんじゃないかな、どんな人間にも内には何かを持っていてそれを他人に見せているかいないか、はたまた自分で気づいているかいないかの違いだけなんじゃないのかな、と考えさせられる。
こんな風に思わされるのも、ほさかさんが作るキャラクターならではだからで。「普通の人」と「おかしな人」という問いかけは、もはやほさか作品の必須要素のように感じます。どの作品のどの登場人物もドロドロしたものとか綺麗なだけじゃない人間らしい欠陥や弱さや異常なものを抱えていて、それが観客をここまで惹きつける魅力のひとつなんじゃないかと思っています。今作でも10人のすべての登場人物にストーリーがあってひとりひとりが息をしてました。そして、「恋をするとき、誰かを想うとき、人はどこかで狂っている」 んだなぁ と。純粋と歪みは紙一重だと感じました。
 
 
伏線もきちんと回収されていて、それでいてじんわりとした余韻も残してくれるところは、ほさかさんの書く作品らしかった。10投げたら8は一緒に拾ってくれて残りの2は各々に任せます的な。全てを解説のようにネタばらしするのではなく、間接的に伝える上手さはさすがでした
 
 
あとほさかさんの舞台演出は、ほんとにオシャレだよなぁ。毎回のことながらセットが可愛かったり、凝っていて、それが独特の空間をつくりだすからすごい。そして、音と光の使い方本当に洒落てる!時間が止まったかのようなピンスポや効果音の入れ方、そして登場人物の心情へと観客を引きづりこませる間のとり方。時間と空間の操り方が絶妙に上手い、美しい。ほさか作品の息を飲み込みたくなるぐらい綺麗さを持っているところが好きです。
 
 
 
以下、キャストについてです。
 
 
有馬さんを始め、名だたる劇団からいろんな役者さんが出演されていたので、とにかくお芝居が本当に安定していた印象。実力派の劇団役者さんが揃っていて、その力量に圧倒されました。
 
 
そしてほさかさんの作品には必ずといっていいほど芝居を盛り上げてくれる個性派のキャストがいて、うさレスでいう貴兄や、眠れない羊のへい兄なんかまさにそうだと思っているのですが。今作ではなんといっても今井さん!今井さんのコミカルなお芝居が入るとすごくアクセントになって作品がグンッと盛り上がる!そしてコミカルだけじゃないのが今井さんのすごいところ。絹雄がお姉さんに現実を突きつけて叱るシーン、作中の中で一番感動しました。突き刺さりました。劇プレやアミューズの作品でも今井さんは何度か見たことがあるのですが、本当に板に立つと全部持ってく人だなぁって思ってます。惹きつけ方も立て方も上手い。すごく器用な方だなぁ。
 
 
町田さん。
町田さんはちょうど一年前の12月に、同じく空想組曲で、同じシブゲキで、「眠れない羊」を観て以来だったのですが、ほさかさんとの相性良い方だなぁと改めて思いました。
どうしようもない役なのに、なぜか憎めなくてほっておけなくなるのはなぜだろう。あきらを捨てられなかった園美の気持ちが分かる気がしました。ただ猟奇的なだけじゃなくて、あきらのうちにある孤独が見えるから、とにかく苦しくて、惹かれる。簡単に言うとすごく萌えるキャラでした。これ町田さんのファンの方からしたら堪らない役なんじゃないかな?私はゲスかったりクズい役が大好きなので、作中のキャラクターではあきらが一番ハマりました。
これまで町田さんのお芝居に触れる機会がなかったので、どうしても昔からの馴染みあるJのころのイメージから抜けきれなくて、眠れない羊のときも正直まだプレゾンやSHOCKでの印象のまま観てしまっていたのですが、今回のお芝居をみて「彼は舞台人なんだな」ってすごく思いました。
 
 
勧修寺くん。
すっっっごい可愛い。まずビジュアルがずるい。黒髪マッシュに、きっちり締めた紺ブレに、赤チェックマフラーをループ巻き。たまらなかったです。とんでもなくイケメンとかいうわけじゃ決してないのに、漂う美少年オーラがすごかった。なんかもう洗練されてた。漫画の世界から出てきたのかな?って思うような子でした。お芝居の初々しさも敬太の役という役にはすごくマッチしていたと思う。ナチュラルな少年感。ついつい目で追いたくなる儚い雰囲気。なによりも絵になる子でした。目隠しのシーン、本当に漫画の1ページみたいだったなぁ。そして誘拐犯と敬太の関係を言葉として舞台上では明かさないところがすごく良かったです。ここも漫画的だった。
 
ジャスミンと敬太のシーンは全部好きでした。あったかいのに切なくて、胸が締め付けられる感覚。家納さんのお芝居がとっても好き。「もう一ヶ所だけ付き合ってよ」「誘拐犯なら人質にそんなこというなよ」このシーンあとに笑いあう二人がたまらなくて!あーもう敬太くんの笑顔プライスレス
 
笑顔といえば、ジャスミンが昭和ソング歌うところで千秋楽は「狙い撃ち」歌ってたんだけど、勧修寺くんが笑ってしまっていてとんでもなく可愛かった!吹き出すとかじゃなくてニコニコが抑えられないみたいな表情で、お姉さんは心臓ズキューーンやられましたよ。観ている私が顔のにやけを抑えられなかったよ。どんだけ可愛いんだ勧修寺くん!!(初日は、め組の人歌っていて、その家納さんも面白くて好きでした。家納さんもオールマイティで器用な方だ!!)
 
観劇後にあの可愛い男の子は何者なんだ?とすぐプロフィールを調べてしまいました(笑)ジュノンボーイのファイナリストで、公演初日が19歳のお誕生日だったそうで。若いなぁ〜。これからの活躍に期待したいです。いやー、可愛かった!
あと、これは終演後アフタートークに参加したお友達から聞いたお話なのですが、桑野さんから「他の役するなら誰がいい?」という質問を受けた勧修寺くんが「町田さんのあきらです。裏表ある役がしてみたいからっていうのと、僕の役は桑野さんとの絡みがなかったのですが、町田さんがすごく楽しそうに桑野さんとお芝居していて…桑野さんと絡みたいのでアキラがいいです」的なことをおっしゃっていたらしく、なんて出来る子なんだ!!!と。自分のやりたい役をきちんと言いつつも、主演で質問者の桑野君のこともしっかりと立てて、もうまさに満点のお答え!この19歳すごい。めちゃくちゃ好感度高い。ジュノンボーイ恐るべしです。
 
 
桑野くん。
平凡な役だけど主役でいないといけないって本当に難しそう。周りの方のお芝居が個性的なので、圧倒されっぱなしでしたが、桑野くんらしい桑野くんにしかだせない亀山くんがそこにいたなぁと思いました。なよなよしくヘタレだけど、ピュアで応援してあげたくなるような一生懸命な男の子。この手のタイプの役をすることが桑野くんは本当に多いなぁと思います。私は桑野くんの役者としての力を買っているので、これは黒ハンのときもすごく思ったのですが、劇団に所属してる方や場数を踏んでる方のお芝居はやっぱり上手いので、こういうところで揉まれるのは桑野くんにとってすごく刺激になるだろうし、素敵な役者さんに囲まれて同じ板の上で奮闘する姿が今年最後に見れて良かったです。
亀山くんの印象はまさに地味でダサいチェリーボーイ。だからそんな彼が簡単に前半でご都合主義な展開になってしまい、あれれ?って感じだったのですが、見事にそんなハッピー展開はひっくり返されたわけで。「ストーカーみたいで気持ち悪い」って園美に思われていたとおり、たしかに純粋で可愛いんだけど片思い中の亀山くんは確かに気持ち悪いんです(笑)自分がもしも園美ちゃんと同じことされたら(態度にだされたら)、絶対シフト代わってもらうな~という感じだったので、そんなふうに観客である私を思わせていた桑野くんの亀山くんはまさに勝ちだったと思います。
名前呼ばれて「あっくんです〜!」ってなるところキモ可愛かったなぁ。マスターの妻の空想になるところもコミカルで面白かったです!今年はイヌッコロさんの元でがっつりコメディを2作品やったこともあって、笑いの取り方とか間の置き方とか以前よりも格段に上手になったなぁと思いました。
そして、映画の話を熱弁するときの亀山くんとても好き!オタクっぽい痛い感じも良かったし、なによりも好きなものを語るときのキラキラした目がまさに亀山くんの純粋さを良く表していて。あと、映画の話を嬉しそうにするっていうのが、桑野くんそのものもと通ずるところがあって(もちろん再演なので当て書きとかではないのですが)なんだか楽しかったです。
園美とアキラとのことがあってからの亀山くんはどこか成長して、もちろんあんなことがあったあとだからすごく切ないしその姿はモロいんだけど、それでも前向きな気持ちも捨てていない亀山くんの姿は見ていてとても救われました。桑野くんのお芝居って観客を自分と同じ立ち位置や気持ちに引き込む力があって、感情移入しやすく見せてくれるのところがすごく好きです。
 
 
それにしても青山先輩切なかったなぁ。どんな気持ちで前作のDVD借りたんだろう、とか。だからあの映画を観に行くことは頑なに薦めなかったんだなぁ、とか。
「頑張ってたんだから、見逃さないでよ」
映画のセリフとかけていう青山先輩に、たまらなくキュンとしました。私が男だったらこれだけで一気におちます!笑
 
 
カーテンコールの最後に、マスターと亀山くんだけが残ってカップをひっくり返す演出がとてもお洒落。ご馳走様でしたの瞬間まで、ほさかさんの世界観でした。
 
 
 
 
 
 
 
空想組曲ならではのファンタジー要素もあって面白かったのですが、これまで観てきた作品に比べると、そこまで衝撃的なインパクトはなかったかなぁ  と。過去に賞も取ってる作品だし、みんな絶賛しているのに、どうして私はちょっと違和感を抱えてるんだろうと色々考えたのですが、きっと私が想像してたよりも綺麗にまとまったお話だったんでびっくりしちゃったんだと思います。あと私が飽き性なこともあって、展開がなかなか進まないもどかしさや、繰り返される場面に少しくどさみたいなものを感じてしまったりして、これはたぶん作品がどうとかいうわけではなく、単に私の好みのテンポじゃなかったんだなーと思ってます。それと、なんだろう初期の作品だからかな、ダーク度は薄かったです。これまで私が観てきたほさか作品があまりにも、「え!?こんなお芝居作っちゃうの!?」というインパクトが強すぎる強烈なものばかりだったので、それに比べるとストレートだった印象でした。どちらかというと一般向けというか外部向けの作品みたいな。スパイシーな刺激を求めてすぎていました。今回はそういう作品じゃなかったのに。観劇前に勝手なイメージや御門違いな期待を積み重ねるのはよくないなぁと反省。今回はドクターペッパーではなくて、コーヒーだったんです。口入れた瞬間弾けるのではなく、飲み込んだものがじんわりと沁み渡る、そんなお話でした。
だから、それを踏まえて観劇した二回目は一回目よりもずっと楽しく見ることができました。変な先入観なしに素直に見た千秋楽のほうが、「すごい作品なんだなぁ...」ってストンと感じたというか。初日にみたものと千秋楽にみたものは私にはなんだか別物のように思えました。うん、すっきり。それにしてもほさかさんの頭の中ほんとにどうなってんだよ。